第2章 : 暗闇と秘密の行進

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 単純な質問の形。刺々しさもなかったし、答えを強要している響きもない。仁羽が発した質問であることが意外に思えるくらい、純粋な、単なる質問。  成島は、廊下でお姉さんのことを言われた時みたいに一瞬無表情になる。だけどすぐに笑顔を広げて答えた。 「戸川美保は、グラビアアイドルだよ」  有無を言わさない強い調子。成島は笑顔を崩さない。首をわずかに傾けて、聞こえるね、とつぶやいた。それから、つぶやきの延長みたいに言葉を吐き出す。 「……それで、似てるんだ」  祈るようにメノウ様をかかげたまま、次の言葉ははっきりと口にした。 「お姉ちゃんに」  爽やかにほほえむ成島。あれ、成島の姉ちゃんってそんなだったけ、と記憶をあさってみる。  うーん、あんまり顔覚えてないんだけど……成島とは似てたような気がする。そうなると成島は戸川美保と似てるってことになるんだけど……似てないよな。  すると、成島は俺の頭の中を読んだようなことを言った。 「あ、お弁当届けに来たお姉ちゃんとは違うからね」 「え、そうなの?」  思わず返しつつ、それじゃあ一体何人姉ちゃんいるんだ、と思った。成島はゆるやかに答える。     
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