第2章 : 暗闇と秘密の行進

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「うん。真ん中にね、もう一人いるんだ」  成島の発言に、仁羽がぴくりと動いたのがわかった。遠山は動じない……というか寝てるんじゃないか。 「離婚した時、お父さんと行っちゃったから全然会ってないけど」  え、と声を発しかけて固まる。初めて聞いたぞ。離婚云々なんて絶対話題に上るのに。……大体、成島は父親いるはずだ。父親参観で見たぞ、と思ったけどすぐに理解する。 「幼稚園の頃、こっちに越してきた時には再婚してたから、ほとんどの人知らないでしょ」  誇らしげに笑われて困る。それは一緒に笑ってもいいものかどうか、と思っていたら気づいた。  廊下で月の光問答をしている時の、「生き別れの姉」の話。あれはたぶん、このことだった。嘘じゃなくて、きっと本当だったんだ。 「お姉ちゃんもきっと、こんな風に浴衣着てお祭り行ってるだろうなって。写真集見てると、思うんだ」  口元に笑みを浮かべて、遠いまなざしを浮かべる。思い出しているのは、写真の中の戸川美保か、それとも――重ね合わせている、誰かなのか。 「あとね、写真集だとうちわ持ってるんだけど! そのうちわにうさぎが描いてあるんだよ!」
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