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記憶を手探りしつつ一応聞いてみたら、数秒してから一言、「妹」という返事があった。それだけで終わるのも何なので、世間話的に聞いてみる。あくまで家族関係のことなのでやんわり。
「仲良いの?」
「全然」
そしたらきっぱりとした即答が帰って来る。眠さの欠片もないほどはっきりとした言葉だった。何かを言おうと思ったけど、仁羽の早くしろ! というイラついた声に遮られる。
もう一度遠山を見直すと、眠そうな顔に戻っていて今の会話はなかったことにするつもりらしい。仕方ないので、「今行くよ」と返事をしてから階段を下りた。
踊り場に差し込む月の光は廊下にまでは届かないから、光は遠くなる。むしろ、光がある分廊下がよけいに暗く見える。
イライラした様子の仁羽はきっと早く帰りたいんだろう。出来ることなら美術室にだって寄りたくないに違いない。
俺だってそれには全力で同意するけど――成島があんなに嬉しそうに笑っている。
しびれをきらしたのか、仁羽が歩き出す。その横に、遅れないようにと成島が並んだ。
二人の背中を見ながら後ろに続けば、遠山が俺の横に並んだ。横目で見ると眠そうな顔で、無表情みたいに見えたけど。
「……素直じゃないよね」
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