第3章 : 置いてきぼりグローリー

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 ぼそり、と言う遠山の台詞に反応して、仁羽の肩が揺れた。こういう時だけ豊かな想像力を発揮してしまうらしい仁羽のことだ、いろいろホラーな展開がよぎったんだろう。 「……生きてる?」 「……準備室に戻る」  声をかけてみたら、顔を真っ白にして短く答える。こんな場所にいられるか! と叫んではいるけど声は細いし、放っといたら発狂しそうだった。  でも俺だって、こっちを見下ろしている等身大の像とか、半分だけ見えてる肖像画とか、ある意味心霊アイテムいっぱいの部屋に長くいたいわけじゃない。 「えーと、じゃあ成島、俺たち準備室にいるから」  写真集を探しているはずの成島に声をかけてから準備室に戻ると、仁羽は開いた扉の前に陣取っていていつでも帰れる体勢だった。俺も入口近くの壁にもたれている。  淡い月の光を受ける準備室は、ごちゃごちゃしていて狭く感じるなぁ、と思いつつ隣に立っている仁羽を見た。  顔は険悪だけど、眼鏡の奥はちょっと涙目だった。あとからゆっくりとやって来た遠山は、ちらりと窓を見てつぶやく。 「……月がきれいだね……」     
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