第3章 : 置いてきぼりグローリー

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 ぼんやりつぶやく。あの二人は大物だから、逃げ出さないまま残っているんだろう。  仁羽は黙ったままで、いらいらした様子で頭をかいて、苦々しげに舌打ちする。その様子に、俺は恐る恐る声をかける。 「だって戻らないと……超嫌なヤツだよ……?」  置いて逃げただけでも充分嫌なヤツだとは思うけど。仁羽はわかってるよ、と凶悪な顔で返した。「わかってるけど、戻り辛いだけだ」と、顔をしかめて言うから、俺も心から同意の言葉を返す。 「うん、確かに、俺も戻り辛い」  置いて逃げた相手の所に向かうなんて、気分のいいものじゃない。ものすごく戻りにくいのは確かだ。だけど。  月の光が仁羽を照らす。美術室では中々不吉な気もしたけど、こうやってちゃんと生きてる人間なら、やっぱり月の光はきれいだなって思う。  それから、そういう会話をしたことだって思い出す。ほんのついさっき、くだらない話を、四人でしてた。他の誰でもなく、俺たち四人で。 「でも、戻ろうよ」  短く言えば、仁羽が渋い顔でうなずく。否定はしなかったし、さっさと歩き出すから、それが何よりもはっきりとした仁羽の答えだ。     
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