第3章 : 置いてきぼりグローリー

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 俺たちは、二人と合流するため美術室へ戻る。懐中電灯なかったけど、月の光と外灯も、案外明るかった。  半分近く廊下を疾走していたらしく、美術室は遠い。淡い光の中、だらだらと、こんな風にずっと歩いてきた気もしたけど、よく考えればたぶんたいした時間じゃない。  そういえば、さっきの音って神輿が帰ってきた号砲じゃなかったっけ。やっぱり祭りは終わってしまったのか……。耳を澄ますと、空耳かもしれないけどお囃子が聞こえたような気がした。  けれどそれは、前からやって来る足音ですぐにかき消える。一瞬身構えたけど、聞こえた声で誰なのかを悟って力を抜いた。 「園田! 仁羽!」 「おー、成島」  手を振ると振り返され、だだだっと距離を詰めてくる。どこ行ってたのー、と言われて口ごもったけど、黙っていても仕方がない。  素直に逃げたことを謝れば、横で仁羽もごにょごにょと謝った。すると成島は、首をかしげてあっさり「うん? 別に良いよー」とうなずく。しかし、すぐさま顔色を変えて叫んだ。 「あ、それより大変なんだって! 遠山が怪我したんだよ!」  予想外の言葉だった。何だって、と成島を見れば、仁羽も隣で止まっている。成島は早口で言葉を並べ立てる。
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