第3章 : 置いてきぼりグローリー

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「驚いたはずみに転んで足ひねっちゃったみたいなんだけど、何に驚いたのかはわからないんだよね……って、そういえば二人ともなんで逃げたの? 僕が写真集探してる間に、何かあったの?」  無邪気な笑顔で尋ねられる。一体何て言えばいいんだろう、と言葉を探っていると、成島は普通の素振りでさらりと告げる。 「僕も準備室にいたけど、何があったかよくわからないんだよね」  気づいたら二人ともいなくなってて、遠山が怪我してたんだよ! と言う成島を数秒眺める。  え、待って、成島準備室にいたの。  思った所で、美術室に入ってからと準備室における数々の場面がよみがえってくる。もしかして……? 「準備室で、机の下から這い出して来たのって……成島?」 「そうそう! 美術室にあると思ってたんだけど、そういえば準備室の棚の下に隠しておいたんだよ。変な人に見られたら困るから!」  満面の笑みで、楽しそうに成島が言う。そうですか、棚の下に入るには、机の下に潜らないと駄目ですよね……。うん、まあ成島小さいもんな、そりゃ影も小さいよな。  納得したついでに、もう一つ確認を取る。 「えーと……準備室にある、白い布かかってるのって……?」 「おっきな鏡だよ? あ、さっき出てくる時布落としちゃったけど」  ちょっと引っかけちゃって、とつぶやいた所で、仁羽が瞬時に成島の頭をはたいた。  瞬時に「何すんの!」と叫べば、仁羽は「それはこっちの台詞だ、この大馬鹿野郎」と清々しく笑った。かと思ったら吼えた。 「奇跡的なタイミングで出て来やがって!」  カッと目を見開いて、若干上ずった声で叫ぶのは、たぶんあの時のことを思い出しているからだろう。成島は数秒黙ったけど、すぐに意味を理解したらしい。顔色がさっと変わった。 「もしかして、二人が逃げたのって……僕の所為?」  不安げな顔で振り返り、俺を見つめる。何て答えるのが正解だろう、と思いながら言葉を選んで答えた。 「えーと……。わざとじゃないし、悪気があったわけじゃないってことはわかってるよ。驚かそうとしたんじゃないんだろ? 単純に、一生懸命探してただけだし……」
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