第3章 : 置いてきぼりグローリー

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 ぴんくのあみぐるみを思い出す。馬鹿にされるかな、とも思ったけど、仁羽も笑った。否定せず唇の端に笑みが浮かんでいる。何かを言うわけじゃないけど、充分な答えのような気がした。  それから俺たちは、遠山を気遣いつつ準備室を出た。見慣れた廊下に出る。  少しだけ重い熱気を孕んでいた廊下は、青白い光に照らされてまっすぐ伸びている。散らばっていた懐中電灯は回収したけど、なくても大丈夫そうだったので鞄にしまった。  遠山はひょこひょこ前へ進んでいて、その背に成島と仁羽が声をかける。 「ちゃんと歩ける? 無理したらだめだよー、いざって時は僕が肩かしてあげるからね!」 「……うん、平気……」 「無理すんなよ。癖になると面倒くせぇ」 「だから大丈夫……」  俺は俺で「駄目になったら肩貸すし……おんぶでも抱っこでもしてやるから」と言ったら真顔で拒否された。冗談なのに。  だらだらと、さっきよりペースを落として廊下を歩く。何時なのかはわからないけど、そろそろ腹をくくるしかないと思う。見える景色は真っ暗だし、心なしか気温も下がってる気もするし、時間を確認したくない。     
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