第3章 : 置いてきぼりグローリー

14/26
前へ
/177ページ
次へ
 成島は常に遠山に対して気を配っていて、ちょっとでも異変があったら即対応出来る体勢だった。仁羽は暗がりに文句も言わず、ただ歩いている。あまり会話はないけれど、話さなくてもいいような気がした。  三人にとってはこんな風に無言でいることなんて、当たり前なのかもしれない。その無言の中に自分が混ざっているのは不思議だったけど、変ではないと思えた。 「……ちょっと休憩しよっか」  水道の前に差しかかった時、不意に成島が声をあげる。遠山は「別に……」と言ったけど、俺も賛成、と手をあげた。だってさっきから、少しずつ遠山の歩くスピードが落ちている。痛みがあるのかもしれない。  水道の真向かいにある教室の壁に背を預けて座ると、成島も隣に座り込む。文句を言うかと思った仁羽は成島の正面に座り、視線で遠山をうながした。一応考えたらしいけど、抵抗する気もないのか遠山はゆっくり俺の前に座った。沈黙が落ちる前に、仁羽が強い声で言う。 「ちゃんと冷やしとけよ」  それ、と言って足を示すと、遠山より先に成島が反応した。じゃあハンカチ冷やすね! と叫んで水に濡らして来ると、「どうするの?」と問いかける。仁羽は難しい顔をして、一番はここで安静にすることだけどな、と漏らした。
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加