第3章 : 置いてきぼりグローリー

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 ぽつり、と落とされた言葉があんまり重かったから。無理やり吐き出すみたいで、ついさっきのことを思い出した。階段の途中で、成島は姉弟仲がいいんだね、と言った時のことを思い出す。遠山はあの時も、こんな顔をしていなかったっけ。 「……『ないない!』って騒いでると思ったら……。こんな所に入れて、自分で忘れたんだ……」  だから勝手に部屋に入るなって言ってるのに……とこぼす様子は、呆れているのとも違っている。はっきり嫌っているわけじゃないけど、仕方ないなあって認めてるわけでもない。  複雑に絡み合っている気がして、声をかけ辛い。だけどそんなこと意に介さない人間がここにはいるわけだった。 「遠山って妹いるんだね! いくつ?」  明るく質問をするのは成島で、そこには完全なる好奇心しか存在しなかった。遠山も無視はせず、「小一?」と答える。 「わあ、それくらいなら可愛いねぇ。ちっちゃいもんねぇ」  楽しそうに歓声をあげて、成島は言う。仁羽も「ああ……そんくらいだから、お前の部屋入ってモノでも隠すのか」と納得顔だった。  俺は腹の底がむずむずする気分を味わいつつ、遠山の返事を待つ。何だか遠山の言い方だと、そんな簡単なものじゃないような、気がするんだけど……。 「……かわいくないよ。邪魔なだけだ……」
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