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まあ、もうイマサラだから別にいいんだけどね……と言う顔は本当にどうでもよさそうだった。おだやかな夜と同じように、何も起こらない変哲のない夜を過ごすように、落ち着いた顔。
「スマートフォンの色も……妹がやたら気に入っちゃって……あんな色なんだよね……。俺の意思そっちのけで、妹が好きだっていう理由だけで……買ってくるんだから……」
呆れるよね、という様子はそのまま寝入ってしまいそうだと思った。言葉を探して黙ってしまうけど、それを打ち破る声がした。
「お前は、それでいいのかよ」
強い響きで真っ直ぐ突きつけたのは仁羽だ。にらみつける顔をして、文句くらい言えよ、と続ける。成島は眉を下げているけど、仁羽の言葉に「少しくらいは言ってもいいと思うよ」とうなずいた。
遠山はそんな二人に、奇妙なものを見る目を向ける。
「別に……毎回泣いて謝られるし……いいんじゃない……」
悪気はないんだし、どうでもいいよ……という言葉には強がりの欠片もない。嘘でも冗談でもなく、当たり前だって受け入れて、本気でどうでもいって顔をしていた。
「……いつも……俺のことは忘れられてるから……あんまり話さないけど……今日は……たくさんしゃべったよ……」
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