第3章 : 置いてきぼりグローリー

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 そう言って、あふ、と一つ大あくびをして「この話は……終わり……」と言葉を落とした。  眠そうに瞬きを繰り返す遠山は、何てことない顔をしていた。  強がりでも何でもなく、わざわざ言い立てる必要もないんだって。本当に特別何かを思っているわけじゃないんだって。そういう顔だ。  俺だったら、と思ってしまう。俺だったら、そんな風に自分がいないみたいにされて、必要じゃないなんてまざまざと思い知らされるなんて嫌だ。    だけど遠山は何てことない顔をして、至って普通の当たり前みたいに言う。  辛かったね、とか悲しかったね、て言うのは違う気がした。たぶん遠山は単なる事実を述べただけで、慰めとか労りとかを求めて話したわけじゃないと思うから。  何よりこれ以上踏み込ませない気配がある。触れられることを望まないなら、俺には何も言えない。 「よし、じゃあさっさと包帯の代わり見つけて、行こうぜ」  当たり前のことだって受け入れてしまっているのを、俺は痛いと思うけど、きっとそれは遠山が言うことであって俺が口にすることじゃない。本当に遠山が心から受け入れているのかもしれないし、俺が勝手に思ってるだけかもしれない。     
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