第3章 : 置いてきぼりグローリー

22/26
前へ
/177ページ
次へ
「だめだよ、悪化しちゃうかもしれないし!」 「というわけだから、いってらっしゃい仁羽」  諦めたら? と言ってみるけど、その点仁羽は諦めの悪い男だ。誰が行くか! と吼える。  遠山は俺たちの会話を聞いていたけど、少ししてから深く息を吐き、「なら俺は置いていっていいから……三人とも帰れば……」と言い出した。 「包帯なくても……安静にしてればいいんでしょ……。仁羽と違って学校怖くないし……寝るだけだし……平気だし……」 「置いてかないよ」  考えるより早く口から飛び出していた。成島も大きくうなずいて、仁羽は何も言わないけど文句もない。俺はもう一度、目の前の遠山に向けて告げる。 「置いてかないって」  ふと思い出すのは、美術室に戻ってきた時の遠山の顔だ。  あの時遠山は、不思議そうな顔をしていた。帰ってきた俺たちを見て、あり得ないものを見るみたいな、全然予想してなかったみたいな顔をしていた。戻ってくるなんて、考えてもみなかったって顔だった。 「……さっきも、遠山のこと置いていこうとしてたんじゃないんだよ」     
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加