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「だめだよ、悪化しちゃうかもしれないし!」
「というわけだから、いってらっしゃい仁羽」
諦めたら? と言ってみるけど、その点仁羽は諦めの悪い男だ。誰が行くか! と吼える。
遠山は俺たちの会話を聞いていたけど、少ししてから深く息を吐き、「なら俺は置いていっていいから……三人とも帰れば……」と言い出した。
「包帯なくても……安静にしてればいいんでしょ……。仁羽と違って学校怖くないし……寝るだけだし……平気だし……」
「置いてかないよ」
考えるより早く口から飛び出していた。成島も大きくうなずいて、仁羽は何も言わないけど文句もない。俺はもう一度、目の前の遠山に向けて告げる。
「置いてかないって」
ふと思い出すのは、美術室に戻ってきた時の遠山の顔だ。
あの時遠山は、不思議そうな顔をしていた。帰ってきた俺たちを見て、あり得ないものを見るみたいな、全然予想してなかったみたいな顔をしていた。戻ってくるなんて、考えてもみなかったって顔だった。
「……さっきも、遠山のこと置いていこうとしてたんじゃないんだよ」
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