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成島は途中になっていた戸締りを再開し、遠山はのそのそと立ち上がる。ゆっくり歩き出したので俺もあとに続けば、成島もすぐに追いかけてくる。
立ち並ぶ本棚の間を抜けて図書室の扉まで来たら、仁羽の背中が見えた。
「あれ。待っててくれたの仁羽」
違うだろうな、とは思ったけど茶化しついでに言ってみる。「そんなわけねえだろ」と、呪い殺しそうな視線を向けてくるだろうと予想しながら。
だけど、仁羽はそうしなかった。
「――開かねえんだよ」
振り返った仁羽はそれだけ言った。
強張った顔をしていた。眼鏡の奥の瞳は険しいけれど、いつものイライラした時とは様子が違っている。焦りのようなものが浮かんでいる気がして、どきりと心臓が鳴った。
俺はおおげさに、「またまたぁ」と声を上げる。
「仁羽ってば、そんな冗談面白くないよ」
笑い飛ばす素振りで言えば、仁羽は固い顔のまま「ならお前がやってみろよ」と扉を指し示すので、位置を入れ替えてドアノブに手をかける。
右に回し、押す。
開かない。
反対に回しても引いてみても、がちゃがちゃと音を立てるだけで、全然開かなかった。成島も遠山もやってみるが、やっぱり開かない。俺たちは黙り込む。
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