第3章 : 置いてきぼりグローリー

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 名案だ、と言いたげな顔をしてるけど。    一階廊下に面した窓は、外へ出られないようにするためなのか、明かり取り用みたいな高い位置の窓しかない。  二階から上は、普通に腰くらいだから出ようと思えば出られるけど、ロープもなしに下りられるわけがない。いや、あっても下りない。そんなアクロバットなことはしない。とんでもなさすぎるし危ないし、怪我したら大変だ。  そんなことを心からの抗議のもと言ってみたのに成島は気にしない。さらに一連の会話を聞いていた遠山が、会話に加わってきた。 「……校長室の前の廊下に……大きい木があるから、たぶん下りられると思うけど……」  しかも成島に賛成だった。こうなれば、一階の玄関口が内側から開くか鍵をかけ忘れていることを祈るしかない。全力で念じていたら、成島が大きな声で言葉を落とした。 「あー、疲れたねぇ。お腹空いちゃったし」  ずるずると成島が階段に座り込む。その言葉に、俺も空腹を思い出した。そうだ、お昼食ってから何も腹に入れてない。 「うわ、何も食ってないの気づいたら俺も腹減ってきた……」  成島の隣に座ると、仁羽が舌打ちした。長居する体勢に入ってるからだろうとは思ったけど、仁羽だってお腹が減ってないわけがないのだ。現に、成島が「そういえば」と言って鞄からお菓子を取り出すと表情が変わる。 「これ食べよーよ」  スナック菓子とビスケットの袋を取り出して言えば、吸い寄せられるように遠山が近づいてくる。仁羽は渋っていたけど「食べないの?」と無邪気に成島が聞けば、こっちに足を踏み出した。
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