第4章 : 君の知ってる僕のこと、僕の知らない君のこと

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 そうした方が神様喜ぶんだ、とか言われたけどな、と言えば仁羽がしかめっ面で「そんな事情は知らねえ」と答えてスナックを放り込む。神様の事情に興味はないようだ。 「大体、俺たちがついてったのは町中を練り歩く神輿だ。町だと普通の神輿と変わんねえし、疲れるだけだ」 「……とか言いつつ、小学校六年間きっちり参加してるのが仁羽らしいよなー」  町内の小学生たちが借り出されるのは、神輿の後ろからついてくるお囃子隊を乗せた山車を引く役目だ。神輿を担ぐのはあくまで大人の役目なのである。  俺は祭りに参加してる気分味わえて楽しかったけど。そのあとにもらえるお菓子セットも大好きだったけど。 「みんなで一緒のことやるのって、楽しくなかった? 俺は結構好きだったよ」  人数が多いほど燃えるし安心するし心置きなく出来る。聞いてみると、成島は朗らかな笑みを浮かべて言い切った。 「僕それ、あんまりやってないよ」  にこにこ、と笑みを浮かべた成島の言葉に、仁羽が何だと、と反応した。十中八九「上手くサボりやがって」という意味だろう。
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