第4章 : 君の知ってる僕のこと、僕の知らない君のこと

4/28
前へ
/177ページ
次へ
「僕の家わりと山に近いから、全部回ってると帰り遅くなっちゃって、少ししか出られないの。だから途中で帰ってもいいよーてなって、全部はやってないよ」  最初はちゃんとやるんだけどね、と続く言葉に、そういえばそうだったな、と思った。詳しい事情は聞いたことなかったけど、途中から抜けていつの間にかいなくなっていた。  体小さいし、体力的な問題とかで低学年組にいるのかなぁ、とか考えてたんだっけ。仁羽は悔しそうな顔をしていて、その視線を遠山にも向ける。 「……そういやお前も見なかったな。どうせサボリだろ」 「……心外だなぁ……俺は、ちゃんと正当な取引をしたまでです……」  取引? と仁羽が眉を寄せて聞き返す。遠山は小さくあくびをしながら、あんなの毎年なんてやってらんないし……交換条件だよ……と続けた。 「……一回だけやるから……あとは休んでもいいって……学校とも約束しました……」  あふ、とあくびをかみ殺してビスケットを口に放り込んだ。仁羽はいまいちピンと来ないらしく顔をしかめたままで、成島はきょとんとしている。  何を話しているのかわかっていないみたいだけど、俺としては長年の謎が解けた。     
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加