第4章 : 君の知ってる僕のこと、僕の知らない君のこと

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 苦々しげに仁羽がつぶやくけど、一応やれることはやっておこう、ということで廊下の一番奥、体育館につながる外廊下の入口まで行ってみることにした。教室の鍵も確認しながら。  通用口から光が入るとは言っても、一階の窓は小さいし上の方にあるので、全体的にぐっと暗くなる。  沈黙ももはや気にならないのでそのままにしていたけど、しばらく経ってからふとそれぞれの顔を見渡した。  遠山は相変わらず眠そうだし、成島もいつも通り何だかにこにこしている。仁羽の顔は完全にこわばっていた。 「おー、懐かしいよなー。一年の教室」  ちょうど一年の教室の前だったので、出来るだけ明るい声で言った。教室の鍵も確かめてみるけど予想通り開かなかった。  うちの学校は一年生が一階で、学年が上がるにつれて教室も上がっていく仕組みになっている。去年まではここの教室を使っていたわけで、懐かしいのは嘘じゃない。 「下駄箱近くていいよなって思ったけど、さすがに一年じゃあんまり遅刻しないよな」  むしろ、段々だれてくる三年の方が遅刻率は高いわけで、なのに一番下駄箱から遠いとか嫌がらせだと思う。     
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