第4章 : 君の知ってる僕のこと、僕の知らない君のこと

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「遠山とかさー、二年になって下駄箱遠くなったから困ったりしないの?」 「……下駄箱が近いかどうかは……あんまり関係ないよね……」  一年生の時からぶっちぎりの遅刻魔だった遠山曰く、遅刻するかどうかの瀬戸際ならともかく、最初から遅刻決定の時間に来るので下駄箱の位置は重要ではないらしい。 「あ、なるほど……。ってことは成島も関係ないし……仁羽はそもそも遅刻しないか」  そうだねーと笑う成島は、遅刻しそうだとわかったらあっさり学校を休むタイプだった。仁羽に至っては朝のHRが始まる二十分前くらいには教室に着いている始末だ。 「つーか仁羽は一体、そんなに朝早く来て学校で何してんの?」 「別に。授業の予習とか復習とかしてるだけだ」 「真面目だなー、仁羽は。予習はともかく復習なんてやったことないんだけど」 「だから馬鹿なんだろ」  あっさり切って捨てられた。だけど、唇の端に笑みが乗っかっていって、こわばりが少し解けていた。ふむ、と思いつつクラス表示を見上げると「一年二組」という字が見える。 「そういえば俺一年の時、遅刻しそうになって窓から入ったことあるわ。下駄箱行ってる余裕なくて」  教室の窓はさすがに普通サイズなので、出入りは可能だ。今は教室に鍵かかってるから無理だけど。
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