第4章 : 君の知ってる僕のこと、僕の知らない君のこと

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 鉄製の大きな扉には、これ見よがしに鍵がついていた。真ん中から左右に開くようになっている扉の、取っ手部分に南京錠がついている。  両手で持ってもまだ余るほど大きな鍵が、がっちり扉を固めていて、開きません! と全身で意思表示しているような気すらしてくる。 「……うーん、難しそうだねぇ」  開かないだろうな、と全員思ってはいたけど、とりあえず試してみる。当然開かなかった。  壊れてたらいいな、と鍵の根っこを揺らしてみたり、ショックで落ちないかな、と扉を蹴飛ばしたりしてみたけど無駄だった。  足が痛くなったのと、音が廊下に反響しただけ。鉄製の扉はびくともしないで立っている。 「……ここは諦めた方が良さそうだね……」  どうでも良さそうに遠山が言うと、仁羽も「そうだな」とつぶやいた。成島はまだガチャガチャやっていて、鉄の扉が大きく動く音がこだまする。金属音がこすれあって、頭に反響する。  だけど、ようやく開かないことを納得したらしい成島は、不意に動作を止めた。途端に、音が消える。     
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