第4章 : 君の知ってる僕のこと、僕の知らない君のこと

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 ぼんやり思ってから、ふと笑った。誰にも気づかれてないと思ったのに、遠山が気づいた。 「……なに……?」 「ん、いや」  よりにもよって遠山だったから、真顔になろうと思ったのによけい笑ってしまう。不審の色が濃くなったので、とりあえず弁明することにした。 「……静かだなーって、思ったんだけど。そしたらみんな静か静か言うから、思い出しちゃってさ。遠山の名前も静じゃん」  だからつい笑っちゃって、ごめん、と言えば、眠そうだった遠山の目が見開かれる。 「……園田……」  しかも真剣な声で名前を呼ばれるから、何事かと思う。名前言うとマズイ事情でもあったのかな……とか考えてしまった。だけど。 「名前……知ってたの……?」  予想しなかった言葉に、へ? と間抜けな声が出た。成島や仁羽もこっちを見る。 「俺の名前……園田、知ってたの……?」  もう一度言われて、聞き違いではなかったのだとわかる。しかし、聞き違いじゃないにしても、なんでこんなに真顔で言われるのかがわからない。 「う、うん……。遠山静、だろ?」  注意深く答えると、遠山よりも先に素っ頓狂な声が上がった。成島だ。 「え! 遠山って静っていうの!?」     
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