第4章 : 君の知ってる僕のこと、僕の知らない君のこと

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 知らなかったのか、と言おうと思ったら仁羽も意外そうな顔をしていた。お前もか。へえー知らなかったー、とのんびり成島が言うと、うん、俺も……と遠山がつぶやいた。 「園田が知ってるとは、思わなかった……」  しみじみした言葉に、複雑な気分に駆られる。クラスメイトの名前くらい知ってて当然なのに、どうしてそんなに意外そうなんだろう……。 「ねー、仁羽も驚いたでしょー、静だって」 「まぁ、ぴったりだよな。お前、しゃべらないし。園田もよく知ってたな」 「いや……当たり前だと思うけど……」  いっそ感心しているような顔で仁羽は言うけど、俺にとっては何の不思議もない当然のことだった。だからそう言ったのに、俺以外の三人には本気で驚かれた。  しかも、仁羽が「俺はクラスメイトのフルネームなんて知らねえ」と言いきると、他の二人も同意している。  他人に関心がないのは知ってたけど、小さい頃から一緒っでヤツらがほとんどで、どうしてフルネームを一人も知らないでいられるんだ……。謎すぎる。だけど、三人にとっては俺の方が謎らしい。 「じゃあさー、園田ってクラスの人間のフルネーム大体言えるんだ」 「大体っていうか全員……」
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