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つい現実逃避したけど、強い声に我に返る。
刺々しく吐き捨てたのは仁羽だ。それはもう険しい目つきで、悪態を吐いている。まあまあ、と声をかけようとしたら、別の声が答えた。
「……気づかないよ……」
ぼんやりとしたまなざしを浮かべた、遠山だった。
眠そうな顔で「あの人、基本的に雑だから……人閉じ込めるの、これが初めてじゃないし……」とつぶやく。
え、それまさか。恐る恐る質問を投げる。
「……遠山、閉じ込められたの初めてじゃない……?」
「……今年に入って三回目だね……」
「まだ七月なのにすでに三回目か! 多すぎるだろ!」
薄々思ってたけど、あの用務員めちゃくちゃ大雑把すぎる。
豪快で小さいことは気にしない人だとは思ってたけど、せめてそれくらいは気にしてほしい。
どうするんだこの状況、と頭を抱えたくなっていると、「どうしてくれやがるんだよあの担任」という低い声が響いた。
全ての元凶は担任にあり、という顔の仁羽だった。
「こうなったのも、居残りを命じたからだろ。二択って形は取ってたが、あんなもんほぼ一択だろうが」
「夏休みなしか残って書くかなんて、居残るしかないよねぇ。せんせーだから絶対やらせるし」
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