第4章 : 君の知ってる僕のこと、僕の知らない君のこと

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 仁羽からしたら暇人なのだろう。いらいらした様子で、仁羽は言葉をつなぐ。 「……何の得にもなんねえっつーのに、何でもかんでも知ってるのかよ」  損とか得とかそういう問題でもないんだけど。もしかして仁羽は、自分のことを知られるのが嫌なんだろうか。そういう人もいるから小出しにしてたのに。 「……ごめん?」 「謝んな」  思いっきり足を蹴られた。あれ、これ余計なことまでなんで知ってたんだよって怒ってるんじゃないのか。軽く困惑してたら、成島が笑顔を浮かべて「ねぇ」と声をかけてくる。 「あのね、怒ってるんじゃなくってね。ちょっとびっくりしちゃったんだよ」  にこにこ、と光を溜め込んだみたいな顔で続ける。いつの間にか両手にはメノウ様を握りしめていて、「だって誰も知らないと思ってたんだもん」と言った。 「僕とか……仁羽とか遠山のことなんて、誰も気にしてないでしょ? だから名前とか、他のこともきちんと知っててびっくりしたんだよ」  別にいいんだけどねー、それが普通だったからびっくりしたんだよねー、とメノウ様に同意を求めている。そういう自覚はちゃんとあるんだな、と思いつつ慎重に答えを探す。
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