第4章 : 君の知ってる僕のこと、僕の知らない君のこと

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「自分しか知らない、自分だけしかわからないって思ってても、それを知ってるヤツがいるんだってわかったら、少しは寂しくないかなって」  そうしたらいつか、必要としてもらえるかも、なんて。諦めることも出来ない俺の努力はこんな形をしている。見ていてほしいと願うなら、俺がきちんと人を見ていたい。呼んでほしいと思っているなら、呼べる名前はちゃんと持っていたい。 「そしたらまあ……ほら、お前は覚えててくれたか! って感謝されるかもしれないし!」  なるべく何てことない顔でそう続けた。うっかりしゃべりすぎた。世間話みたく、馬鹿話だって思ってくれたらいい。  もうほとんど癖みたいなものだけど、いつか、呼ばれたなら答えられるように努力だけはしておいてるなんてことは。 「まーそういうわけだからさー、別に名前覚えてるのとかも大したことじゃないんだよな」  細かいエピソード知ってるっていっても、全部網羅してるわけじゃないし。だからそんな感心しなくてもいいんですーと、冗談交じりに言って歩き出す。  つい本音をこぼしてしまったのが気恥ずかしくて、足早に歩く。そしたら、後ろから背中にタックルをかまされた。つんのめりながらふりむくと、成島が腰にまとわりついていた。 「……なに、成島」
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