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アサドの決めた通り、二日に一度、ラフィークは栄養価の高い軍事用の携帯食糧をザイードに運び続けた。
少しの量でも腹持ちが補えるそれは、食事を摂っている証拠となる排泄物を最小限に抑えられる──
「ラフィーク…」
「はい?」
「済まないなこんなことまでさせて……」
申し訳なさそうに詫びるザイードにラフィークは少し驚いた顔を向けていた。
牢内には排泄用の便宜が備え付けられてある。
上から吊られた鎖を牢の外にあるローラーで長さを調整させれば排泄は囚人となる本人が自力で行える。
凶悪犯用の独房の為に牢内でも確りと拘束出来るように作られた鎖はとても太く頑丈に出来ていた。
便宜に付けたビニールに排泄した汚物を処理すると、ラフィークは笑って返す。
「師匠に、ザイード様の手足になったつもりでいろと言われてます」
「………」
「………なんとしても王の座に就いてください──」
ラフィークはそう言ってザイードを見つめた。
「国を心から思うなら、ザイード様は王位に就くべきです──…」
「……っ…」
「上に立つ方の心一つで国はどうにでもなってしまう──…」
「───…」
「サルジュ王子が即位してしまえば戦乱は免れません──…富裕層には化学兵器に沢山の投資をしている者がいる…兵器を売り捌く為には戦争、間違いなくこれを始める。国政は今よりもっと悪くなります──」
ラフィークは真っ直ぐにザイードを見ていた。
そして頭を深く下げる──
「ザイード様の御即位を、心より望んで居ります──」
「………」
「これは私だけの思いではなく貧しい民、皆の思い……民に希望を与えるだけでなく確かな幸せを──」
「………っ…」
「ザイード様は民にそれを与えることができる方ですっ──」
ラフィークは繋がれたザイードに敬礼を向ける。
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