先き立つ者

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 次の日、部屋中の刃物を処分した。もう二度と、同じ過ちは繰り返さないように。もともと食事には頓着せず、ましてや料理なんてほとんどしたことがない俊幸にとって、この判断には何の苦労もない。  唯一鋏だけは手元に残したが、それは鍵つきの引き出しの奥にしまっておいた。  いつ死んでもいいように書いた遺書代わりの手紙も、同じ場所に入れて、極力目に触れないようにしておいた。この手紙は俊幸にとって、決して表沙汰にできない過去の象徴であり、拭い去れない後悔の証だった。
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