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数週間後、リカコはプロダクションブレーブを訪れた。ここは御堂刹那が所属する事務所だ。
前もって連絡をしていたので、刹那が出迎えてくれた。
「この間はお世話になりました」
リカコは丁寧に頭を下げた。
「レコーディングはどうでした?」
「はい、御堂さんのお陰で、無事終わりました」
刹那は嬉しそうに微笑んだ。
「『夢と約束』をレコーディングしたのは一度だけです」
「え、でも……」
「恵子の実家に連絡して事情を説明したら、ご両親が現場に来てくれました。許可もいただいたので、クレジットにもちゃんと名前を入れるつもりです」
「大丈夫なんですか?」
「はい。二人の夢です、だから二人で唄って、二人の想いと声を届けたいんです」
「そうですか」
リカコは深呼吸した。
「恵子はまだアタシの隣にいますか」
刹那は首を左右に振った。
「喜ばなきゃ、いけないんですよね……」
「恵子ちゃんは夢を叶えたんです」
「でも、アタシはもっと一緒に唄いたかった」
「夢の続きは、小原さんに託したって事じゃないでしょうか?」
アタシは託された、恵子に……
「アルバムが出来たら送ります」
「楽しみにしています」
リカコは改めて礼を言ってブレーブを後にした。
恵子との夢は始まったばかりだ。
声は聞こえないがリカコの心の中で、恵子はこれかも一緒に唄い続ける。
-fin-
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