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「明日美は先輩のこと、眼中にないですよ」
いくら田代先輩がイケメンでもな。
それくらいは俺にも分かる。
ずっとそばで明日美のことを見てきたんだから。
「確かに。でもまだチャンスはあるやろ?この先どうなるかなんて誰にも分からんとやし。俺の努力次第では明日美ちゃんだって……」
「あーっもう!!いくら先輩がイケメンやからって、そいはなかですよ。そんがん言うなら、付き合いますよ明日美と。だけん金輪際、明日美のことを親しげに『明日美ちゃん』って呼ばんでくださいよ!」
……分かっている。
田代先輩が本気で明日美を口説こうとしている訳じゃないってことくらい。
きっと俺の態度が煮え切らないと思っているのだろう。
本当は誰がなんと言おうと自分の考えを曲げるつもりはなかったけど、気が変わった。
ここはひとつ先輩を立てて、挑発に乗ってやるとしよう。
ただし、そのまんま乗っかるつもりはない。
あくまでも、フリだ。
明日美に俺の彼女になったフリをしてもらうことにしよう。
つまり本物ではなく、偽りの恋人って訳だ。
まず明日美に相談しないといけないけど。
さて、どうすっかな……。
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