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 太古の昔、とある山中の奥深く、巨人が住まう都があった。  巨大な都に、巨大な住人。  石のように頑丈な身体と、石のように強固な意志と、石のように冷たい心をもつ巨人。  石で築かれ、石によって囲われた、難攻不落の石の要塞。  だが、潰えてもう久しい。  遺跡と化した都に、もう巨人の姿はない。  至宝を守る番人として造られた、一体の石巨人を除いては……。  季節は巡り、また巡る。  けれど石巨人は、過ぎ去りゆく時を知らず、石のようにただ眠り、誰も訪れることのない遺跡の奥深くで、巨人たちが守り、時に争い、奪い合いを繰り返した至宝を守り続けていた。  あるとき、闇に閉ざされていた遺跡に一筋の光が降り注いだ。  一人の若い女性が降り立ったのだ。  彼女は冒険者。  唯一無二の至宝があるという噂を聞きつけてやってきたのだ。  難攻不落の要塞には随所に罠が仕掛けられているが、彼女は見事にかいくぐり、遺跡の最奥へと辿りついた。  そして、ついに至宝をその手にした。  美しく輝く光。  それは見たこともないもので、彼女は見惚れてしまう。  するとそのとき、待ち構えていた最後の罠が起動した。     
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