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頭の中で色々と考えていたせいか、存在を忘れていた隣に佇む憐れな高倉の様子を、横目でちらりと伺う。
彼は意外にも、無言で先輩の姿をじっと目で追っているだけであった。
高倉ってば、澄ました顔しちゃって。
まあ、頬が少し赤くなってるよ、なんて、心の優しい私は言わずに見過ごしてやろうではないか。
「きっと夕陽のせいだね。出てないけど」
「は?なに?」
「別に」
ふんっと鼻で笑ってやると、なんだよ!と未だ頬の赤い奴に頭を叩かれる。
「いった!なにすんの!」
「お前がムカつく顔すっからだよ、ぶす!」
あん?なんだとこの野郎!と言って私は高倉の脇腹を擽ると、最初こそ我慢していたものの、ギブギブ!悪かったから!と言って両手を掲げごめんなさいと謝罪した。
それの姿を見て、口元が緩む。
「高倉ぁ、ファミレス行こーよ」
「はあ?なんだよいきなり。しかも昨日も行って俺が奢っ」
「また擽ぐるけど?」
「…かしこまりやしたー」
「分かればいいのよ分かれば」
わはは、と、私の笑い声が静かな教室内に響き渡る。
机の横にかけていた鞄を肩にかけ、教室を後にする。
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