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あっちゃんはとても笑顔のすてきな女の子。みんなの輪の中心から、すこし離れたところでいつもにこにこ。あっちゃんが笑うと、クラスのみんながなんだか優しくなります。
わたしは、あっちゃんとは小学校一年生のころから一緒のクラスだったので大の仲良しです。クラスのアルバム委員のわたしは、みんなの写真を撮ってアルバムを作るのが仕事でしたが、何の変哲もない写真の中にあっちゃんの笑顔があると、それだけでみんなの顔もにこにこと輝いて見えるということを知っていました。
そのほほえみはみんなに向けられているはずなのに、同時にみんなの笑顔もきらきらと輝いていくようでした。なぜならにっこりと笑ったあっちゃんのほっぺには片方だけのえくぼがあって、それを見た人はとても幸せな気持ちになるからです。
ある日の学級会で、委員長が言いました。
「学芸会の出し物で、人魚姫をやりたいと思います。主役の人魚姫をしたいひとは手をあげてください」
人魚姫役は場面によって演者がわかれ、五人が選ばれることとなりました。王子様を助ける場面、魔女に人間にしてもらう場面、ですが、最後の泡になって消えてしまう場面だけがなかなか決まりません。
私は言いました。
「あっちゃんがいいよ!」
「あっちゃんの笑顔はとてもすてきだから、きっとすてきな劇になると思うの」
わたしの言葉に、先生は驚いたような顔をしていました。あっちゃんに向けて何かを言おうとしたようですが、あっちゃんは首を横に振り、やります、と答えました。わたしも驚きました。なぜならあっちゃんはいつも中心から少し離れたところにいて、主役を演じるようなことはなかったからです。
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