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ところが、劇の練習が始まると、あっちゃんはぴたりと笑わなくなりました。それどころか、学校を休みがちになってしまいました。わたしは心配になり、先生にどうしてなのか尋ねてみましたが、先生もわからないと答えるだけでした。
わたしは我慢できなくなって、学芸会の練習に出てきたあっちゃんに尋ねました。
「あっちゃん、人魚姫の役、嫌ならやらなくてもいいと思うよ。わたしが無理に推薦してしまって、ほんとごめん」
するとあっちゃんは、わたしに笑みを向けました。それは今までに見たことのない、困ったような微笑みでした。
「ねえゆきちゃん。声を無くして、王子様への恋も実らなかった人魚姫は、最期に何を考えていたんだと思う?」
わたしは言葉に詰まりました。あっちゃんの言葉の意図がわからなかったからです。
「ゆきちゃん、たくさん写真を撮ってね。私、ゆきちゃんに見えるように、頑張るからね」
みんなには、秘密にしてね、と。小さくそう言って、人魚姫の役を黙々と練習していました。ですが、学校はさらに休みがちになっていきました。
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