直和と拓未

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奈波と別れて、洋人の家の港を後に自転車を漕ぐ。 リアス式海岸の稜線は曲がりくねっていて高低差があり結構しんどい。 でも、この道を自転車で走るのもあとわずか。 高校を卒業すれば、車移動が主になるから自転車を漕ぐことはなくなるだろう。 そう思うと、このしんどさも貴重に思えてくる。 家は、この辺りでは比較的住宅が密集している地区にある。 地区の高台には幼稚園と小学校、中学校がまとめて立っている。 なので、必然的に地区の子どもたちは10年以上一緒に同じ場所に通うことになる。 地区の入り口に着いて、自分の家の前まで来ると、向かいの家の広い駐車場で立ちながら電話をしているのが目に入った。 拓未だ。 家と拓未の家は隣同士だから拓未に会う事は珍しい事ではない。 あまり気にせず俺は自分の家の敷地に自転車を止めて、電話中だから気を使って拓未には声をかけないで家の中へ入ろうとした時だった。 「じゃあ、俺たち別れるんだな。」 拓未の口から聞いてはいけない言葉が聞こえてきた。
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