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「ほら俺、都市部での就職が決まったじゃん。そしたら、遠距離恋愛は嫌だって言われてさ。」
確かに、彼女からしたら彼氏と離れ離れになるのは辛いし寂しいのと思うのは、彼女がいない俺でも想像は出来る。
「お前だって、彼女と離れるの寂しいだろうに。」
俺はフェンスに寄りかかったまま顔を伏せている拓未に返事をする。
俺の返事に顔をちらりとあげて拓未が答える。
「まぁそうなんだけど、あっちから告白されて付き合ってたから、あんまり未練はないというか。彼女がずっと辛い想いをするよりは今の段階で別れた方がお互い幸せなんだと思うよ。」
どこか達観したような、まるで他人事の様に答える拓未にほんの少し腹が立つ。
女の子から告白なんてされた事のない俺からすれば、曲がりなりにも自分を好きになって気持ちを伝えてくれた子に対して、未練がないとか簡単には言えないと思う。
そこが、恋愛経験があるのとないのとの違いなんだろうか。
俺がひとりで黙って考え込んでいると、拓未がふと呟いた。
「やっぱり、初恋に敵うものはないんだな。」
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