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「え?」
拓未の言葉に、俺の胸の奥がざわついて少し嫌な予感がした。
そんな俺をよそに、さっきまで別れ話をしていたとは思えない穏やかな表情で拓未がまた呟く。
「どんなに誰かと付き合っても、どこかで一番最初に好きになった女の子が頭をよぎるんだよね。それだけ忘れられないっていうか、好きなんだよ。そいつの事が。」
そう言って、拓未は顔をあげて凛とした眼差しで俺を見た。
どこか、救いを求めているような儚さも含んでいた。
よくある話だけど、昔、小学校の修学旅行の時に夜に男子3人で好きな女の子の話になった事がある。
その時拓未は2つ上の女の子の名前を言った。
だけど実際は違うと薄々感じていた。
洋人は自分では気がついていないけど、俺たち3人とも同じ女の子が好きだったという事を。
そしてその女の子が誰が好きであるかという事も。
「お前さ、その子が他に好きな奴がいる事知ってるんだろ?だったら邪魔だけはするなよ。」
そう言った俺の顔は若干怒気が滲んでいた。
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