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「ほらー、ゆっこちゃんの着付けも終わったんだから早くしなさーい。」
2階の自分の部屋の鏡の前で最終チェックをしていたら、階下から母さんの急かす声が聞こえてきた。
「うん、今行くー。」
生返事をしながら、私は浴衣の裾を持ち上げて階段を下る。
1階のリビングに着くと、ピンクに近い赤地に鮮やかなひまわりの柄の浴衣を着た有希子がいた。
細くて背が高く、活発な印象の有希子にぴったりな色合いだった。
私はというと、クリーム色地に朝顔とツバメの柄の入った母さんのお下がりの浴衣を着つけてもらっていた。
「ゆっこ、かわいいよー。」
「奈波も色っぽいよ。」
着慣れない浴衣を着て、2人で恥ずかしそうに笑い合う。
今日は、みなと祭。
2人はうちで母さんに着付けをしてもらって、浴衣を着てみなと祭の花火大会へ行こうとしていた。
花火大会は町で一番大きい漁港の河川敷で行われる予定だ。
「じゃあ準備出来たら車に乗ってね。」
母さんが玄関に置いていた車の鍵を手に取った。
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