奈波と有希子

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「あ、あそこじゃない?」 有希子が少し背伸びをして駐車場の一番奥にある「地場産品」「帆立炭火焼」などと書いてあるのぼりが立っている白いテントを指差した。 人混みをゆっくりと進みながら有希子の指差すテントの様子を見ていると、手前の炭のコンロで野菜や帆立、イカなどの海産物を焼いている背の高い圭介さんが目に入った。 圭介さんは頭にタオルを巻いているけれど、暑さに耐えきれない様子で流れる汗を二の腕でぬぐっていた。 そんな圭介さんから少し離れたところで、同じく頭にタオルを巻いて慣れない手つきで商品を渡しながら会計をしてる洋人の姿を見つけた。 普段と違う様子の洋人を見て、なぜか驚いてしまい足取りが一瞬止まる。 足取りが止まった私に気がついた有希子は私の手を取ると、ぐっと力強く引っ張り圭介さんの屋台の前まで一気に連れ出した。 「お、奈波に有希子!」 圭介さんが私たちに気がついて帆立を焼いている手を止めて声をかけてくれた。 それに気が付いた洋人がこちらを向いた瞬間、目が合った。
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