拓未と奈波

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本来なら彼女と2人で来ていた、みなと祭り。 先週、遠距離恋愛が無理だからと別れたばかりだった。 その事実を直に聞かれていたのは予想外だったけれど、逆に誰かにその事実を知られていた方が気持ちが楽になれて良かったのかもしれない。 ずっと心の奥で想い続けていた、その気持ちを正当化してもらえるような気がしていた。 海側から少し涼しい風が吹き込んでくるのを感じながら、屋台の並ぶ漁港の駐車場へと向かう。 この町にこんなに人がいたのかと不思議に思うくらい、活気に溢れ賑わっている。 反面、祭りが終わればまたいつものこの町に戻ってしまう裏寂しさも含んでいるように見えた。 楽しそうな笑顔で笑い合う家族連れやカップルを横目に、俺は洋人がいるであろう屋台を探す。 カキ氷やわたあめなんかの屋台が目に入るけど、洋人がいるのは野菜や海産物を焼いている屋台だ。 洋人の家で養殖している、採れたての帆立を焼いてるはずだ。
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