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穏やかで広大な水面の上に、その船はちょこんと乗っかっているように見える。
その船には、幼馴染みの洋人が乗っている。
湾にある、帆立の養殖棚での作業中。
彼は漁師の息子で、実家の稼業を手伝っている。
洋人は三男で上にお兄さんが2人いるのだけれど、2人とも家を出ている。
洋人の家もなんだか複雑なんだけど、彼は漁師の仕事が嫌なわけではなく、高校卒業後は漁師を継ぐ。
この町に残る。
暑そうにTシャツの袖をまくって二の腕を出して、首に巻いたタオルで汗を拭っているのが防波堤からでも確認出来る。
そんな彼から、目が離せない。
洋人は作業中だからもちろんこちらに気がつくわけはないけれど、自分だけが彼を見つめているのがなんだか悔しい。
「ずっと見てるんだから、気付いてよ…。」
そよそよとした涼しい風が沿岸部から吹いてきて、気持ちも緩んで心の声が口からこぼれる。
「ふーん、ずっと見てるだけでいいのか?」
誰もいないと思っていたのに、背後から突然声をかけられて驚いて声のする方を振り返る。
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