第2章 ルイーダと、瑠衣。

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マネー稼ぎのために、手頃なレベルのモンスターを地道に倒してまわっていた時だった。 少し油断したところを敵の群れに囲まれ、なんとかゲームオーバーは免れ冒険者の拠点である城下町へ撤退したところで、安堵の溜め息と共に思わずぼやく。 「はぁー……。無課金キャラはやっぱ弱ェなぁ…。」 と、その時、画面右下のチャットに動きがあり、条件反射でそちらに目を移す。 “ルイーダさんがログインしました。” ナビゲータのグレーの文字が流れてくると同時に、青緑色の文字でメッセージが届く。 “ちゃおー。煮物作ったよ、これから持ってくから家居てね。” 「……。煮物って。」 そう言えば、今日の日替わりクエストは「フレンドとチャット会話して100マネー」だった。 それを達成するためにラインじゃなくチャットを送ってきたことはすぐ分かったが、ゲームの世界観にあまりにもそぐわないその内容を見て吹き出してしまう。 エルフ特有の、白に近いシルバーの髪にエメラルドグリーンの瞳、尖った耳。 杖にマントに大きな三角帽子。 そんな感じでファンタジー要素を盛りに盛った風体の少女が、煮物の詰まったタッパーを持ってとことこ歩いてくる姿を想像してしまう。 “了解、気をつけて。” 俺は俺で、簡単に返事をして同じく日替わりクエストを達成し、一旦スマホを置いて大きく伸びをした。
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