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就職とともに上京して暮らし始めて、はや数年。
正社員の仕事はそれなりに忙しい時もあるが、それでもやってくる大した予定のない休日と、報酬として手に入る、とりあえず貯金されているだけの金。
それらを遣り繰りして喜ばせたり養ったりしないといけない恋人や家族も未だできないまま、もて余した挙げ句ゲームにつぎ込み、そのまま三十路近くなった俺である。
何の遠慮も気遣いもなしに付き合える瑠衣の存在は、つまらない俺の毎日にささやかな彩を与えてくれていた。
瑠衣は、もう長いこと帰っていない故郷の話ができる数少ない話し相手であると同時に、社会人になってからはソロプレイばかりしていた俺とパーティを組んで各種ゲームに付き合ってくれる、願ってもないパートナーでもあった。
さほどやる気のないゲームを言われる通りに登録しプレイし続けているのは、つまり、そういうことだ。
ブルーノと違って顔立ちも冴えないうえ救いようのない課金廚である俺に、何だかんだ文句を言ったり殴ったりしつつもお節介を焼いてくれる彼女に対する、俺なりの感謝の現れだったのだ。
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