第3章 白ウサギと、金の懐中時計。

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“日替わりクエストを達成。100マネーを手に入れました。” 「はいはい、っと。」 日替わりクエスト達成を告げるアナウンスを聞き流しながら、暇潰しに俺は城下町の商店街をぶらついた。 アクセサリー屋の前を通ると、人の好い笑顔を浮かべた主人が揉み手しながら、お勧めの商品について説明してくる。 イチオシらしい「天の羽衣(ミルキーヴェール)」という装飾品は、もうすぐやってくる七夕に合わせて店頭に並んだ期間限定の商品だ。 「これを装備すれば、待ち望んだ運命の人と巡り会って結ばれること間違いなし!」 という謳い文句だが、メタなことを言うと、装備の効果としては戦闘後の報酬でレアアイテムのドロップ率が数%上がるとか、確かそんな程度だ。 他の装飾品と異なり専用グラフィックが用意されていて、女性キャラが装備するとそれだけでアバターが豪華に見えるらしい。 まぁ、それだけの、所詮はフレーバー寄りの装備だ。 瑠衣は、このヴェールにご執心だった。 とかく女は、運命、というワードに弱いらしい。 同じ期間限定品なら、俺としては「星涼みのアミュレット」のほうが断然お勧めなのだが。 天の川の清流に浸った星の欠片が傷ついた体を癒してくれる――メタ的に説明すれば、持ち主死亡時に一度だけ自動蘇生をしてくれる品だという。
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