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その幼馴染みは、産休に入った社員の穴埋めということで、俺の隣の部署に偶然派遣されてきた。
十数年ぶりの、見る人が見たら運命的と言える再会を果たした、その日の晩のことだ。
「暇でしょ?紹介送るから青野も登録してよ。なんならクエストも手伝って。」
そんな感動も何もない文面とともにラインで送られてきたURLを、それでも俺は言われた通りに開き、大して興味もなかったこのゲームに参加する運びとあいなった。
画面で求められるがまま、アバターや種族、職業を決めていき、ワンデザの世界に住む自分の分身を作り出す。
幼馴染みの使うキャラクターはエルフの魔道師で、戦闘では中~後衛希望だという。
というわけで、俺のキャラが前衛に立ってパーティを組めるよう、 種族は無難に人間、前に立って壁役をしながら多少の回復・補助魔法も使える剣騎士を選んだ。
職業は、一定の経験値と引き換えに転職ができるシステムらしい。
武器や防具や装飾品も、アプリ自体の人気の割に頻繁にアップデートされて、なかなか充実している。
フレーバー要素のアバターも、無料の範囲だけでもかなりの数のサンプルから選ぶことができた。
有料のパーツや装備まで含めれば、このワンデザというゲームは、キャラメイクにおいてはかなりの自由度があった。
しかし自由は、時にプレーヤーを苦しめる。
特に、ゲーム大好き、生真面目かつ時に信じられないくらいの執着心を発揮する日本人ゲーマーにとって、この手のゲームは天国と地獄。
天使と悪魔の両方から誘惑され、翻弄され、何かを手に入れた一方で何かを失っているということに気づかないまま堕ちていける、そんな架空の理想郷だ。
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