10人が本棚に入れています
本棚に追加
大学の職員はもちろん宇宙を知らなかったから、物理学研究室に案内してもらうと、部屋の8割を占めるんじゃないかと思えるくらい、それはそれはタイムマシンみたいなタイムマシンが置いてあった。
白衣姿のいかにも疲れました的なおじさんが一人で何やら作業している。
「あの、こんにちは」
作業に没頭していて全く気づかないおじさんに声をかけた。
「はい!? なんでしょうか!」
すっとんきょうな声出すなという突っ込みは置いとこう。
「あの、これ、タイムマシンですよね。天笠宇宙さん知ってますか?」
たぶん、知らないというか消去されてると思うけど聞いてみた。
「あ、あまがさ? そら? 知らないねそんな宇宙人みたいな名前の人」
お前もそのくちか。じゃなくて。
「やっぱりそうですよね」
「でも、あなたすごいですね。これがタイムマシンってわかるなんて」
誰でもわかるわ!
「あの、ここの先生、ですか?」
「まあ、それなりに」
それなりにという答えに釈然としないものの時間がないので突っ込むのは控える。って今まさに突っ込んでるわ、これ。
「じゃあ、信じてもらえないかもしれないですけど、説明すると。このアルバムの写真に載っていたはずの私の高校の同級生の天笠宇宙さんが写真から忽然と姿を消しまして、同時に他の人の記憶から消えましてーー」
そう言えばなぜに私の記憶からは消えないんだ?
「ーーその彼が過去に行くとか言って電話を切りまして。彼の研究室がここなんです。23歳、大学院生で王子様っぽいイケメンでありながら地味で目立たないところが可愛いというかなんて言うか」
先生は、数十秒間微動だにせず瞬き一つせず過ごすと、ポンと手を叩いた。
最初のコメントを投稿しよう!