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そして数日が過ぎた__
俺は意気揚々とドアを開き、足を踏み入れる。コーヒーのいい匂いが鼻孔をくすぐる。ケーキの甘い匂いが食欲を増幅させる。そこはオークの近くにある、スカーレットっていう喫茶店。貧乏一直線のオーク生徒が集まるこじんまりした店だ。
「なんじゃシュウ、お主も来たか」
不意に誰かが言った。
「げっ、おめーは」
俺は戸惑い立ち尽くす。店の奥で、鋭い視線を投げ掛けるのはエリザベート。同じテーブルには、その取り巻きの女二人とゴン太の姿もある。
「シュウ貴様、ここは拙者らが封じておるのだぞ。邪魔だから早々と立ち去れ」
すかさず言い放つゴン太。羽織の袖をさっと払い出し、腰の刀に手をかける。
「なにが封じてるだ。てめーこそ帰れ、邪魔だ」
反応して俺も言い返す。ムカつき気味のゴン太だが、その表情は紅潮してる。こんな店でエリザベートとこそこそしてるから、気恥ずかしいんだろう。普段は、拙者(せっしゃ)は侍、って息巻いてるわりには純情な奴だ。
「シュウ、そんなところに突っ立っていたら邪魔だよ」
だがそんな状況をぶち壊すように、俺を押し退け太助が入店してくる。
その後からはマリアと春菜の姿。それぞれエリザベートに一礼すると、奥に向けて歩いていく。その様子を窺い、取り巻きの女が『珍しいよね、シュウが女と一緒だなんて』とか、『シュウがデートとは、明日は雪だね』とか囁く。それを訊きいり俺も紅潮した。
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