0人が本棚に入れています
本棚に追加
○大洞家・リビングルーム
一画に真新しい仏壇があり、大洞の遺影が飾ってある。その前で泣いている友代。
友代「心臓麻痺だなんて。なんでそんなに突然……(泣く)」
背後から、女(大洞サクラ(25)の声)。
サクラ「お母さん。もうそんなに弱っちのヒヨコみたいにピーピーピヨピヨ泣かないでよ」
友代「(泣きながら抗議して)弱っちのヒヨコで悪かったわね」
サクラ「お母さん、もっちょっと強いニワトリだったでしょ」
友代「強いニワトリ、て何よ。卵をたくさん産むメンドリのこと? コケコッコーって、大
きな声で泣くオンドリなら強いわけ?」
サクラ「そういう意味じゃなくて。めんどくさっ」
友代「言っとくけどね、あんただってトシ取って夫に死なれれば、弱いニワトリになるの
よ」
大洞が半透明の姿で、仏壇の中から、現れる。
大洞「友代……」
友代「(大洞を見て驚いて)あなた!」
サクラ「???」
友代「(大洞に)あなた。戻ってきてくれたの!」
見つめ合う大洞と友代。
サクラ「ちょっ、ちょっとお母さん。しっかりしてよ」
友代「(サクラの言葉など耳に入っていない。大洞に)よかった、戻ってきてくれたのね。
ねえ、少し、二人でゆっくりしましょ。私ね、あなたと仲良くお茶飲みながら、チーズケ
ーキとか食べて、夕日が落ちて暗くなっていくのを黙って見てる……そんな時間を過ごし
たかったのよ」
大洞「俺には、似合わないけどな」
友代「だって、自分に似合わない生き方をさせられている人、いっぱいいるわ」
○以下、フラッシュで
交通事故。車にはねられる若者。
友代の声「思いもよらなかった事故にあったり」
× × ×
押し寄せる津波。
友代の声「災害で避難生活を強いられたり」
× × ×
新聞記事「過労死」の文字。
友代の声「憧れて入った企業がブラックだったり」
最初のコメントを投稿しよう!