第1話「政治家・大洞佑太」

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○大洞家・リビングルーム    一画に真新しい仏壇があり、大洞の遺影が飾ってある。その前で泣いている友代。 友代「心臓麻痺だなんて。なんでそんなに突然……(泣く)」    背後から、女(大洞サクラ(25)の声)。 サクラ「お母さん。もうそんなに弱っちのヒヨコみたいにピーピーピヨピヨ泣かないでよ」 友代「(泣きながら抗議して)弱っちのヒヨコで悪かったわね」 サクラ「お母さん、もっちょっと強いニワトリだったでしょ」 友代「強いニワトリ、て何よ。卵をたくさん産むメンドリのこと? コケコッコーって、大  きな声で泣くオンドリなら強いわけ?」 サクラ「そういう意味じゃなくて。めんどくさっ」 友代「言っとくけどね、あんただってトシ取って夫に死なれれば、弱いニワトリになるの  よ」    大洞が半透明の姿で、仏壇の中から、現れる。 大洞「友代……」 友代「(大洞を見て驚いて)あなた!」 サクラ「???」 友代「(大洞に)あなた。戻ってきてくれたの!」    見つめ合う大洞と友代。 サクラ「ちょっ、ちょっとお母さん。しっかりしてよ」 友代「(サクラの言葉など耳に入っていない。大洞に)よかった、戻ってきてくれたのね。  ねえ、少し、二人でゆっくりしましょ。私ね、あなたと仲良くお茶飲みながら、チーズケ  ーキとか食べて、夕日が落ちて暗くなっていくのを黙って見てる……そんな時間を過ごし  たかったのよ」 大洞「俺には、似合わないけどな」 友代「だって、自分に似合わない生き方をさせられている人、いっぱいいるわ」 ○以下、フラッシュで    交通事故。車にはねられる若者。 友代の声「思いもよらなかった事故にあったり」    ×   ×   ×    押し寄せる津波。 友代の声「災害で避難生活を強いられたり」    ×   ×   ×    新聞記事「過労死」の文字。 友代の声「憧れて入った企業がブラックだったり」
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