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○同・中
大洞が鬼に押されて、中に入ってくる。
中は、江戸時代のお白州そっくり。
正面壇上に、閻魔大王。大きな体に赤ら顔、ひげ面、太い眉。床机に座り、大皿を
膝にのせている。大皿には、湯気をたてているコンニャクが山盛り。閻魔大王は、コ
ンニャクを楊枝に刺してフハフハしながら食べている。
大洞、赤鬼と青鬼によって、砂利敷の上の莚(むしろ)に座らせられる。
赤鬼「閻魔大王様。未決囚を連れて参りました」
閻魔「 チッ。コンニャクが冷めてしまうのう」
閻魔、未練っぽく、大皿を傍らの机に置く。
閻魔「(あきらめて)まあよかろう。ちょうどこいつも腹をすかせておったところじゃ」
と、足元の犬を見る。秋田犬を巨大化したような犬が寝そべっている。
犬、大洞をチラ見して舌なめずりする。
大洞「なんじゃ、これ!」
閻魔「地獄の番犬じゃ。名前は蹴兵衛(けるべえ)。好物はニンタン」
大洞「ニンタン?」
閻魔「牛の舌がギュウタン、ニンタンとは」
大洞「人間の舌?!」
閻魔「嘘をついた舌は、めっぽう美味くなるそうじゃ」
大洞「!(思わず口を両手で押さえる)」
閻魔「(青鬼に)浄玻璃(じょうはり)の鏡(かがみ)を、これへ」
青鬼「はっ」
青鬼、側にあったアンティーク調の姿見を、大洞の全身が映るような向きにして、
スイッチを入れる。グィ~ンという音がして、鏡面が明るくなる。
青鬼「セッティング完了しました」
赤鬼、青鬼、起立の姿勢をとる。
閻魔は机に置いてあった笏を取上げ、威厳をつくろって
閻魔「最獄裁判、ただ今より、開廷!」
赤鬼が銅鑼を叩く。グワァ~ンという音が鳴り響く。
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