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気が付けば、私は言葉の迷路に迷い込んでいた。どんな文章を送っても、悪い印象を与えてしまう気がする。既に三十通り以上の文章を考案したが、どれをとってもパッとしない。
ここまでくると、一種の偏執狂的な何かに憑りつかれているのでは、とも思う。
多分だが、この中のどれを送ったとしても、海咲ちゃんは快く答えてくれるだろう。
あの子はそういう子だ。多分。
けど、私はそれでいいのか、という話である。
海咲ちゃんの好意に甘え、その身をゆだねてしまって良いのか。それで満足なのか。
確かに、海咲ちゃんの豊かな乳や腹肉や尻肉には身をゆだねたいと思う。息ができなくなるほど埋まりたいとすら思う。
だが、そうやって肉体をゆだねさせてもらうならば、私は精神の揺り籠であるべきではないか。寧ろ、海咲ちゃんを包み込む、大いなる母体であるべきではないのか。世の中はギブアンドテイク。相手に求め続けるのが恋。与え続けるのが愛。求め、そして与えるから恋愛。
海咲ちゃんとの一線を越えるためには、求めるだけではいけない。与えられる女にならなくては。
だからって具体的にどうするのかと聞かれても困る。
人が衒学的であるとき、そいつが探偵や偏執教や学者でない場合は、喋りながら次の展開を考えているものだ。そして、その場合において結局何も出てこないという事は、ままある話なのである。
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