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海咲ちゃんは猫好きのこと
スマホの画面を見つめたまま悩んでいると、不意に軽やかなメロディが流れ始めた。アプリの画面が切り替わり、着信を告げている。
「お、おお……」
そこに出た名前。それはまさに海咲ちゃんだった。
慌ててスマートフォンを操作して通話状態にする。
「も、もしもし?」
「あ、野乃花ちゃん? 今、大丈夫だった?」
「あ、うん、もちろん」
心臓がバクバクと激しい鼓動を刻んでいる。
唇も震えている。と言うか、スマホを支える手が震えている。
これを大丈夫というかどうかは、多分意見の分かれるところだろう。
でも、私にとってはそんなことどうでも良い。受話口から出てきたのは、まさしく海咲ちゃんの可愛い声であった。今、海咲ちゃんと私は喋っている。その事実こそが全てなんだ。
「えとね……」
「あの、映画の件」
私が言い出す前に、海咲ちゃんがそう言ってくれた。
なんという奇跡。私たち二人は今、同じことを考えていたんだ。
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