海咲ちゃんは猫好きのこと

1/3
前へ
/69ページ
次へ

海咲ちゃんは猫好きのこと

 スマホの画面を見つめたまま悩んでいると、不意に軽やかなメロディが流れ始めた。アプリの画面が切り替わり、着信を告げている。 「お、おお……」  そこに出た名前。それはまさに海咲ちゃんだった。 慌ててスマートフォンを操作して通話状態にする。 「も、もしもし?」 「あ、野乃花ちゃん? 今、大丈夫だった?」 「あ、うん、もちろん」  心臓がバクバクと激しい鼓動を刻んでいる。  唇も震えている。と言うか、スマホを支える手が震えている。  これを大丈夫というかどうかは、多分意見の分かれるところだろう。  でも、私にとってはそんなことどうでも良い。受話口から出てきたのは、まさしく海咲ちゃんの可愛い声であった。今、海咲ちゃんと私は喋っている。その事実こそが全てなんだ。 「えとね……」 「あの、映画の件」  私が言い出す前に、海咲ちゃんがそう言ってくれた。  なんという奇跡。私たち二人は今、同じことを考えていたんだ。    
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加